身近にしのびよる新型複合汚染
2016-03-22 配信
「新型複合汚染」ということばを聞いて、40年前に私たち夫婦に与えられた最初のこどもを、流産によって失った時のことをふと思い出しました。自分の身代わりにこの子は天に召されたのだと、町の小さな産院で、人知れず涙を流しているところへ、竹熊宣孝医師が突然作家の有吉佐和子さんを伴ってお見舞いに来てくださったのです。
有吉さんが朝日新聞の「複合汚染」の連載を終えられ、その後も有機農業の産直運動などを積極的に応援しておられる頃でしたが、それからしばらくして有吉さんは志半ばで亡くなられました。、今考えるとお疲れの体で、竹熊氏と共に産直を立ち上げた仲間というだけで、見ず知らずの私に会うために駆けつけてくださった彼女の心の中には、どうか後に続く人々の世の中から、命を脅かす複合汚染がなくなりますようにという願いが満ちていたのかもしれないと、その思いに今頃気づかされました。
「有吉さん、農薬や化学肥料や添加物などの複合汚染どころか、地球上に生きるところのないような新型の複合汚染が今私たちの身の回りに迫ってきています。どうしたらいいか教えてください。有吉さんが生きておられたらまたそのことを詳しく書いてくださったでしょうか」と問いかけながら、40年も前に1度だけお会いした彼女の志を、しっかりと継いでいかねばと改めて思わされました。
最近紹介していただいたノンフィクションライターの古庄弘枝さんが書かれた「スマホ汚染」-新型複合汚染の真実-という本を読むと、本当に知らないことは恐ろしいことだと実感させられました。私の力でお伝えするのは難しいので、この本をハラペコの書籍棚において皆さんにご紹介したいと思います。
新型複合汚染による化学物質過敏症、電磁波過敏症で私たちより一足先に、その問題に直面しておられる方々のご苦労は並大抵のことではなく、それを体験しなければ本当にわからないと思います。自分が同じ境遇になった時初めて、こんなにも大変だったのかとわかる前に、1人でも多くの人がそのことに関心をもって、地球丸ごとの環境問題と言われる電磁放射線、神経伝達を阻害する農薬ネオニコチノイド、明らかに健康と環境を壊す遺伝子組み換え食品、洗剤などの香料が周りの人の居場所をうばっているという現実等々。
自然界を無視した私たちのあくなき便利さの追求が、私たちの居場所を確実に奪いつつあるということをいやでも直視し、その改善に向けて、気が付いた人から、身近なところから行動を起こす時だと、有吉佐和子さんの声が聞こえてくるようです。
奥田美和子
ハラペコ通信2016年3月号より