ハラペコ通信2020年9月号 〜有機農業的生き方〜
2020-09-01 配信
ハラペコあおむしでは毎月はじめ頃に「ハラペコ通信」を発行しています。
ハラペコ通信9月
有機農業的生き方
私は現在71歳で,伊賀の山里で小農を営んでいる。生まれは岐阜の山村で、春は魚釣り、夏は川遊び、冬は手作りのスキー、秋は山芋ほり、栗拾いと、今思うと実に豊かな子供時代を過ごしてきた。その時代に身についた技、例えばナタ,鎌の研ぎ方、魚のとり方など今の自分の基本がその時代に築かれたと思う。実に楽しい有意義な子供時代であった。
そんな過去の幸せを感じつつ、これからの人生をどう生きるかが課題である。子や孫そして私が接している愛農の生徒たちに「人が幸せに生きるとは」を示していくことが私の最後の課題だと思っている。
週2時間愛農高校で「有機農業」という授業を担当しているが、年間数60時間の授業であるので、有機農業の歴史や、技術、土・微生物、経営、販売方法おまけに食生活と健康などかなり幅広い内容で、生徒は困惑していると思うが、私が最も伝えたいことは、以下の有機農業的生き方の5点である。
- 農薬や化学肥料などの化学物質を使わないで安全な食べ物を作る(食と健康)
- 作る人と食べる人の信頼関係(信頼)
- 過剰な化学物質(薬 洗剤など)に頼らない生活(自然)
- 資源の無駄遣いを避ける生活(環境)
- 自然生態系への負荷を極力小さくする生活(永続性)
要するに有機農業とは単に安全な食べ物を作り消費者に届ける運動だけでなく、生き方そのものを問い直す運動ということである。
今の我々の生活を振り返ってみる時、全く反有機農業的であることがよくわかる。化学農法による食べ物、不調があればすぐ医薬品に頼り、自然生態系のことなどお構いなしの「快適な生活」を追求し続けている。その付けが新型コロナウイルスではなかろうか。このウイルスは我々の生き方への天からのメッセージの様に思われてならない。今こそ私の子ども時代のような生き方に転じたいと切に願っている。
土の香農園 奥田信夫