はらぺこ通信10月号より「エレマンのきまぐれ商店」
2016-11-14 配信
ダウン症の人たちの文化と社会をつなぐ「気まぐれ商店」
この世界が、私たちが、
共感と調和の中に生きることができたのなら、
世界はどんなに平和だろう。
三重県志摩市と東京にダウン症の人たちのプライベート・アトリエがある。「アトリエ・エレマン・プレザン」だ。ここはダウン症の人たちが自由に創作活動をする場所。志摩市と東京と合わせて約50人の方々が通っている。
アトリエ・エレマン・プレザンの代表を務めるのが、ハラペコ店長葛原の旧友の佐藤よし子さんと旦那さんの佐久間寛厚さん。
佐藤さんのご両親が始めた同アトリエを2000年に引き継いだお二人は、ダウン症の人たちの文化と社会をつなぐことを目指して、2014年に「エレマンの気まぐれ商店」を始めた。
アトリエの中で日々生まれてくる絵をトートバッグなどにデザインして販売することで、「出会うことがなかったかもしれないダウン症の人たちのことを知ってもらいたい」と佐藤さんは話す。
佐久間さんは「彼らを見ているととっても大切なことを教えてくれるんです」という。それは、「共感」と「調和」だ。「一緒にいるととっても心が穏やかで気持ちがいい。すごく魅力的な人たちなんだ。そういうことを知ってほしい」。こんなエピソードがある。彼女たちは初対面の人にもとっても優しい。例えば、初対面の人に対して◯◯さんが好きそうな絵を描いてプレゼントするね、って言って一生懸命絵を描いてくれる。
「彼女たちをみていると、気づかされることがたくさんある。アトリエにきてもらっているのに、私たちが学ばさせてもらっているみたい」と佐藤さんは笑う。
この地球上には、たくさんの人が暮らしている。私たちはその事実をすぐに忘れてしまう。
「自分とは違う」という存在を受け入れない世界はなんだか変だ。「彼らは、違う存在を否定したりしない。彼らは誰に対しても共感を持って優しくて調和をもたらしてくれるんです」と佐久間さんはいう。だからこそ、アートを通してダウン症の人のことを知ってもらいたい、アートを通して、彼ら、彼女らの文化を知ってほしいと二人は願う。
最後に、佐藤さんたちは、ダウン症の人たちが中心となる芸術村「ダウンズタウン」構想を進めています。その村への思いを書いた文章がとても素敵だったので、一節掲載させていただきます。
“ダウン症の人たちと暮らしたら楽しいだろうなぁ
といつの頃からか思うようになった。とにかく一緒にいると心地がいい。
風をつかまえたり、花や雲と話せる彼らといると
人間も自然の一部だったということを強烈に思い出す。
こんな素敵な人達と、自然の中で絵を描いたり、畑を作ったり、
お料理を作ったり、のんびりと生きていけたらどんなにいいだろう。”