「愛農学園 矢野智徳大地の再生講座」を終えて
2016-06-19 配信
「愛農学園 矢野智徳大地の再生講座」を終えて
地球の庭師と呼ばれる矢野智徳さんという造園家がいます。彼は呼吸している大地の脈を見るという変わった手法で庭造りをしています。矢野さんは人間の体に無数の動脈、静脈がはりめぐらされているように、大地にも無数の水脈、気脈が張り巡らされていて、それによって大地の環境は保たれていると言っておられます。その大地の脈を人がコンクリート手法の土木工事で分断したり壊したりして、人間が病気をするように大地も傷んでいると必死で警告し続けながらも、いつも静かで、とにかくこつこつと与えられた現場で、その傷んだ大地の修復に取り組んでおられるのです。今回も愛農学園に到着された時はもう倒れる寸前でした。東北の仙台のワークショップから引き続いて、とても過酷な状況になっている現場が続いたらしく、次に移る前に何としても手当てをしておきたいと4日間ぐらいほとんど寝ないで作業していたというのです。息子が手伝ってくれていたけど3日で倒れてしまったと笑っておられましたが、自分が倒れてしまったらもともこもないでしょうと思いながら、そこまでせずにいられない矢野さんの大地への愛、自然への畏敬、人間の愚かさへの償い、それらに命をかけておられることをひしひしと感ぜずにはいられませんでした。
今回の愛農学園の環境講座は初めから赤字になることが明確で、無謀な計画だと誰もが思ったのですが、矢野さんがそんなハードな中から、愛農の敷地の改善にて着手したいと言ってくださっていることに何とか応えたいと、実施を決定しました。告知機関が2週間を切る中2日間で80人が参加してくだされば、マイナスが出ないということで、どうしたものかと思案しながら準備をすすめていましたところ、ある方がキャンセルの電話のついでに、「費用は足りますか」と聴いてくださり、「半分ほど足りません」と答えますと「その分を補てんしましょう」と言ってくださったのです。ひとつのことを命がけで取り組む人がいて、大事なところにお金を出してくださる人がいる。愛農の大地が本来の里山としていきいきとして呼吸をし、その上で平和や農、命を何より大切にする若者たちが育っていく、そんな夢が子や孫たちに「こんな世の中を作ってしまってごめんね」と詫びながら暮らしている私の切なる祈りでもあります。どうかこの講座を続けていくために応援してくださる方が現れますように。
奥田 美和子
ハラペコ通信6月号より