「もうそろそろ向きを変えよう」
2016-08-08 配信
「もうそろそろ向きを変えよう」
我が家に30年以上も使っている布団とねまき、そしてこたつ敷があります。ねまきは三女が生まれる時に買ったもので36年目。さすがに生地は薄くなってしまいましたが、まだ愛用しています。こたつ敷は神奈川から三重に引っ越してきた時だから33年目。その間何枚もこたつ敷を買ったのですが、その1枚だけは毎年捨てられず今年も活躍しました。さすがにもう1枚上に引いていますが、その温かさが捨てられない理由です。西川のマークでしたがその後探しても、同じこたつ敷には出会えませんでした。消費が美徳の時代には向かなくて、すぐに製造が中止されたのでしょう。
そして敷布団は高知の「ハート」という会社がつくったものです.さすがに外側はぼろぼろになったので、いよいよ捨てようと思いましたが、破れ目からのぞいている綿がきれいなので、思わず全部ほどいてみますと、まだまだ充分使えそうな両面の綿と立派な芯がでてきました。30年使ってもびくともしない布団綿に、職人の心意気に感動してしまいました。「ハート」の山岡社長は、お子さんがアトピーで苦しまれたのがきっかけで、アトピーの人が安心して眠れる布団づくりに打ち込まれ、素材にこだわったハートの布団を今も販売しておられます。ハラペコでも買えますので、関心ある方はお訊ねください。
ねまきにしてもこたつ敷にしても、それだけ長持ちするいいものを作れる技術があるのに、消費拡大につながらないものは淘汰されてきた時代を思い、布団をほどきながら、心底もういいでしょうと思わずにいられませんでした。政治がひたすら経済成長なしに幸せはないと連呼するのに、ついていくのはもうやめましょう。幸せはこんなに長持ちするものを作り、愛用してもらえる職人の技に、人の健康を願って打ち込む農作業の中に、日々の食卓に愛と祈りをこめてご飯を作る主婦の仕事の中にあります。お金ばかりを追いかけているうちに愛が冷え、物騒な世の中になって、子どもたちが、若者たちがふるえています。私たちは愛と感謝いう強力な、幸せのための武器を持っているのですから、それをフルに使って子どもたちを抱きしめてあげましょう。
奥田美和子
ハラペコ通信2016年8月号